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復興支援リレー随想
タクシーは公共交通機関なのか?
株式会社冨士タクシー 代表取締役社長
塚本 泰央

そのような議論が交わされることがあります。当然ながら当事者である私はその気概を持って事業に取り組んでいるつもりであります。しかし、2024年1月1日、その使命感をこれだけ強く感じた日はありませんでした。

発災当日は、被害状況の全容が掴めない中、新幹線、飛行機、路線バスは全て運休、高速道路も通行止め、余震は続き、テレビに流れる映像に不安をかき立てられ、すがる思いでタクシーを依頼されるお客様に対して、可能な限りの対応をしていたことを思い出します。

翌日からは、全国から集まる報道関係者、被災地支援者の手配が加わり、パンクした際の予備のタイヤ、ガソリン携行缶を積んでの輸送業務を担う嵐のような日々がスタートしました。また、2次避難者輸送はバスが主力となりますが、障害を持たれた方などの特別な輸送はタクシーがお手伝いをさせていただきました。発災直後から被災地を行き来する立場として、日々復旧する道路、通信などのインフラを目の当たりにし、昼夜問わずに業務に当たられた方々には本当に頭が下がります。

被災地の復旧のフェーズが移行する中で、タクシー業界全体が損保会社の損害調査に多くの車両が割かれていた時期には、街中からタクシーが消えたことで、利用者の方々からは批判とまでは行かないまでも厳しいお言葉を頂戴しました。公共交通機関を自負する立場としては、力の無さを痛感し、悔しい思いもいたしました。

タクシーは大量輸送機関でありませんが、必要な方に必要とされる個別輸送を提供する役割を担っています。これからも旅客輸送を通じて石川県、能登地域の復興のお手伝いをしていきたいと考えています。