金沢時代の真ん中は、“酒”や“鼓”の日々ばかり~(by トップギャラン♪青春時代)
NHK金沢放送局局長
三溝 敬志

 恥ずかしながら、金沢に赴任以来“鼓”に熱中しております。習いはじめて間もなく2年半。趣味が高じて、NHK会長や県知事などお歴々が列席するNHK金沢放送局新会館開館祝賀会で腕前を披露するという「事故」まで起こしてしまいました…。

そもそもは、主計町に呑みに連れて行って下さった蚊谷さんの「金沢においでたら、何か芸を習った方がよいですよ」という一言がきっかけでした。以来、杵屋先生に師事し、毎週の稽古通い。今ではレパートリーも17 曲まで増えました。

楽しみのひとつは、本物の芸に触れられるということ。歌舞伎舞踊から演奏だけを取り出したいわば邦楽のオーケストラである金沢素囃子は、金沢市の無形文化財にも指定されている伝統芸能です。そして何といっても主計町・東の芸妓さんたちとの合同稽古は、神秘のベールに隠された金沢の奥深い文化に触れられる貴重な場です。とはいっても、先生によるお稽古は厳しく、発表会前はまさにブートキャンプ状態。まるで運動部の部活そのものです。私は大学までずっと運動部でしたので、そこがシンクロしたのかもしれません。今ではバットの素振りならず、鼓の自主トレを毎日欠かさず行っています。地味で辛い稽古が大好き。つまりドMなんですね…。

私は、高1の時、元巨人軍の大監督で当時NHK の解説をしていた川上哲治さんにお会いする機会がありました。短い時間でしたが貴重なお話をド緊張しながら聞いていた記憶があります。最後に色紙を頂きそこに書いてあったのが「努力」という二文字でした。雲の上の人から頂いた言葉。以来、この教えを胸に刻み込んで練習に励んできました。私が好きな事にマゾヒスト的に熱中するのは、案外、ここらへんに根本があるのかもしれませんね。