自炊
株式会社NTT ドコモ
北陸支社長
西野 一郎

 普段電子レンジくらいしか使わない私ですが、自炊は一生懸命しています。自炊といっても食事を作るのではなく、本を1ページ1ページスキャナで読み込み、ファイルにしてパソコンに保存する、いわゆる電子書籍化というものです。
自炊を始めたキッカケは、子供たちが大きくなってそろそろ子供部屋がいるなぁと思っていた矢先、群馬に単身赴任をすることになり、引越とともに本を持ち出したことです。今度戻ってきたときには、自分の居場所はない。当然本を置く場所もない、しからばこの期間を利用して自炊しようと思った次第。
自炊に必要なものは、パソコン、スキャナ、裁断機の3つです。これらを駆使し、膨大な時間をかけて自炊をしています。
電子化のメリットは①本を置く場所が不要。②パソコン、タブレット端末等があれば沢山の本を持ち歩ける。私は専らタブレット端末に入れて出張のときなどに気ままにページを開いています。といってもデメリットもあります。やはり現物の本だと素早く読みたいところを探せるし(特に再読の場合)、赤線を引いたりメモを書き込んだりするのに便利な点です。
手間暇をかけて電子化して、その結果本を読む時間が増え、より思索が深まったのか?残念ながら本を読む時間は増えておらず、実は減。電子書籍化することが自己目的化しないように自炊ならぬ自戒したい。

 

ワインあれこれ(第9回)
―フランスに勝ったアメリカ―

 ワインと聞いて真っ先に思い出すのはフランス・ワイン、そんな人が多いのではないでしょうか。今から数十年前のフランス人達も自分達が作るワインこそは世界一と信じて疑いませんでした。
そんな彼らを驚愕させる事件が起きます。1976年に起きた「パリスの審判」事件です。
当時、パリで最も有名なワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の主催者は、アメリカ建国200 年である1976 年に、フランス・ワインとカルフォルニア・ワインをブラインド(目隠し)でテイスティングする企画を思い付きます。審査員として選ばれたのは著名なフランス人ワイン専門家9名。「フランス人によるフランス・ワインの為の企画」と揶揄されました。
フランス側はシャトー・ムートン・ロートシルト、シャートー・オー・ブリオンなど、最高の顔ぶれが揃い、誰しもがフランス・ワインの圧勝を確信していました。
しかし、白ワインのテイスティング結果は上位5位のうち3本をカルフォルニア・ワインが占め、赤ワインもカルフォルニア・ワインである「スタッグス・リープ 1973」がムートンやオーブリオンを抑えて一位を獲得しました。
納得がいかないフランス・ワイン関係者達は「熟成能力を視野に入れるべき」と10 年後にリターンマッチを申し込みます。ところがまたもや結果はカルフォルニア・ワインの勝利。
改めてフランス以外にも高品質なワインを生産できる国があることを思い知ったのです。

(記 北川雅一朗)